葛川子供水力発電所

子供水力発電所ってなに?

KCLプロジェクト第5期生は、過疎に苦しむ地元、葛川・久多を明るく灯し、人を呼び込むため、豊かな水と森林資源で水力発電所を開発しました。その名も、子供水力発電所です。小学4年の頃、児童生徒数減少による母校の危機を受け先輩が呼びかけた、葛川・久多をKnow知ってもらう、Come来てもらう、Live住んでもらうための取組、KCLプロジェクトに参加しはじめました。安曇川上流に位置する僕の地域は、文化も産業も学校も途絶えようとしています。私達はチラシや動画製作で地域の魅力を伝え始めました。活動の中で偶然にも水力発電支援会社を経営される女性と出会いました。その経営者の方は私達の活動に共感してくださり、味方になってくださいました。同時に、水源に近い地域が元気でいるために、水資源の活用が鍵となる事を教わりました。そして、子供水力発電所開発の構想に辿り着きました。

子供だからできること

子供水力発電所開発に関わる人を繋いで、共感の輪を広げる事が私達の役割です。私達の活動を支えてくださる方々に出会っていなければ、きっと水力発電所の構想は夢で終わっていたように思います。私達は河川の調査から始めました。福岡県の水力発電支援会社、リバー・ヴィレッジの方が流量や落差の計測に立ち会い、学校へ何度も足を運んでくださいました。発電に使う水も、水路が通る山も、発電機を設置する敷地も、私達が好き勝手できるものではなく、持ち主がいます。私達の願いや想いを込めた資料を準備し、それぞれの方と協議する場を設けました。協議を通して、市や県の職員さん、漁業組合長や自治会長が仲間になってくださいました。地元工務店、松井建設の方が、資材調達、水路や水車づくりを支えてくださいました。グッズやモニュメント開発も、水利権や土地の許認可も、専門家に知恵を貸していただきました。私達だけでは実現の難しい課題にたくさん直面しましたが、私達の想いを伝え、共感していただき、仲間になってもらえた事で、活動を前進させる事ができました。幸運にも、たくさんの人と繋がれた事で、夢が現実へと変わりました。

子供水力発電所は役立つの?

私達の目標は少子高齢化が進む葛川・久多を賑やかにする事です。まずは美しいこの地に足を運んでもらいたいと考えています。そのために、自然の豊かさを象徴する水車を作り、子供水力発電所で地域を明るく灯します。地域の伝承に出てくる河童のガワ太郎像や、水力発電応援グッズ、スタンプ、リーフレットなど、足を運んでくださる方が目にし、手にできるものを用意しています。ここでしか手に入らないものを、是非持ち帰ってください。また、KCLプロジェクトウェブサイトやYoutubeチャンネルで私達の活動を発信しています。発電所を起点とした話題を作り、地域を知ってもらい、来てもらい、住んでもらう活動を推進していきます。

この活動の好きなところ

「自分達で決め、自分達の手で実現する事」「出会えた人と絆が生まれる事」がこの活動の好きなところです。地域材の杉をロープで引き、ノコギリで切り倒しました。泥まみれで水路を掘り、ホースを埋めました。ハンマーを握り、木製水車を組み立てました。私の手に、その時の感触が今も残っています。多分、これは忘れないと思います。この活動を始めていなかったら出会う事のなかった人達がたくさんいます。一緒に活動するチームの仲も深まりました。地域おこし自体、一人ではここまで続けることが難しかったと思います。アイデアを出し合い、仕事を分担し、嬉しい事もしんどい事も、みんなで分け合ったからここまでやって来れたように思います。

応援してくださる方の輪を広げたい

活動を始めた頃、私達が発電所なんて本当に作れるのか、内心、不安に思っていました。ですが「地域を明るく賑やかにしたい」という活動の目的や「山間の魅力を伝えたい」という私達の想いにたくさんの方が共感し、仲間になってくださいました。市や県の職員さんは許認可の手続きを、大工職人さんは地域材や道具の扱いを、玩具会社のクリエイターさんはグッズの生産販売や話題の作り方を、まるで新入社員に指導するように教えてくださいました。共感の輪を広げるために水力発電応援グッズ「河童のガワ太郎アンブレラマーカー」を企画しました。水力発電支援会社の方から「身近な方の理解や協力が欠かせない事」を教わりました。私達は地域の方との懇話会で事業計画を相談したり、地域の場に説明しに出向いたり、身近な方に応援してもらえるよう努めました。その甲斐あって、水力発電に伴う水路づくりイベントを企画し、地域の広報誌で協力を募ったところ、300人ほどの小さな集落に、120人を超える人が集まり、200mの水路を完成させる事ができました。地域の方との懇話会で「縁が深まって絆になる」とおっしゃられた方がいましたが、本当にその通りだと思います。水路も水車もグッズ開発も、応援してくださる方がいたから実現できた事だと感じています。発電所開発でできた絆が、今の私達を支えています。私自身、どこか人ごとだった地域課題が、いつの間にか自分のふるさとの事だと思うようになりました。今では、この地域に生まれ育って、この学校に通う事ができて、幸せだと感じています。これまで支えてくださった方々に感謝の言葉を伝えたいです。そして、いつか恩返しをしたいです。

次の世代への願い

私達の活動は、「地域のことを知ってもらう」を目的のひとつにしています。地域の方からいただいた支援金でウェブサイトを運営したり、新聞社やテレビ局を通して活動の話題を広げてもらったりしました。ネットやマスメディアの力は大きく、寄付の申し出や学校見学の問合せがありました。活動を始めた当初、学年のメンバーだけで話していた地域おこしが、今では家族や地域の方とも話す話題となっています。近年、地域のことを知ってくださる人の広がりで、若年層の移住者が生まれています。先輩が声をあげて始まった地域おこしの活動は、バトンをつなぐことで学校の児童生徒数増加という大きな成果も出しています。私達の活動が届いていること、そして、学校の仲間が増えることが本当に嬉しいです。今、私達が握るバトンを次につなげるように、今できることを果たしたいです。いつまでも、葛川・久多の賑わいが続きますように。